第三話 金木戸岩魚

じっとしていても 汗の噴き出しそうな ある八月の日夜半 若い釣友と
岐阜は高原川支流金木戸川へと 岩魚を求め車をとばします。

 
          金木戸の流れ                    
開いたゲートを通り過ぎ 尚も林道を進むと
間も無く車止めへとつきます。
まだまだ林道はつづくのですが 仕方有りません
泊りがけの釣りだろう 奈良 岐阜の二台
先行者の姿は無い。
 
手早く済ませた身支度に 林道上の歩きとなる
昨夜の酒も 流れる汗とともに抜け出すのを感じ
ただひたすら歩き続ける

どれほどの歩きだったのか 対岸の目的地支流への急な踏み後を一気に下り金木戸川本流へ立つ
腰までの徒渉 火照った体に渓水がしみる。

釣友を促し竿をだすも 釣れて来るのはチビ岩魚
ばかり 釣っては放しの繰り返しですが そのまま遡行を続けて行きますと 小さな落ち込みの
ポイントにて 私の竿に岩魚独特のあたりが有り
送り込み軽く合わせをくれ竿に力を込めますが
ラインの先の岩魚が 浮いて来ません 見ると
二間半の 硬調渓流竿は 思い切り締め込み
動きません  「ん、 でかいのか?」
 
すぐ下で竿を出す釣友を呼び 取り込みにかかります どうやら石裏へと入り込んでいるようです、

          車止めにて
そこで一度 竿の張りを弱めてやると 
岩魚はここぞとばかりに動き出し 難なく
釣友の手の中へと 期待ほどの形では
有りませんでしたが 満足 満足 。

遡行を続けて行くと 最初の滝が現れ
その場より すぐ上部の押しの強い
二番目の滝を望む事が出来ます
最初の滝壷を釣友へ譲り眺めて居ると
抜き上げるのは八〜九寸の岩魚ばかり

15年程前 初めてこの谷へ入ったとき
0.6のハリスを強引に引きちぎって行った
ようなやつらは 今は姿を見せません。

最初の滝を左岸より 軽く高巻き 2番目の
滝の壷を左右より探り 再び左岸の壁を・・
今度はちょっとキツイ。
一気に高さを稼いでF2の滝頭へ降りますと
ここからがこの谷の核心部分で 各ポイント
では 例外なく大小の岩魚が姿を見せる。



 中々の岩魚
 
筆者です
数百mで 薄暗い谷底から 落ち口で2条に別れ中ほどで合流する 見事な3番目の滝が現れてき
ます 滝壷の前には 直径1m50ばかりの巨木が横たわりその先は 無数の流木がバリケードを
形成しています  なんとか潜り抜け釣友は右手から 私は腰までの徒渉で左手の岩棚へと移り
竿を振りますが 滝のしぶきにずぶ濡れとなります 今回のような暑い日でなければ たまらない
所でした この壷には必ず大物の岩魚が潜んで居るはずですが 上がってくるのは中型の岩魚
ばかりで 物足りなさを感じながら今回は納竿とします。

          金木戸の岩魚 

この滝を左岸の 悪い泥付きの壁に取り付いて
越えていくと 視界も広がり穏かな流れと変り
源頭まで大小の岩魚を確認出来ます。

さて下山ですが 登りに比べリスクも多く 気を
使います ザイルを出し手がかりの少ない斜面
を 懸垂下降で最初の滝頭の横手へと立ち
そのまま棚状のルートをトラバースして 100m
程先の 尾根沿いに下り 今朝遡行してきた
流れへと立ちます。

                                                      OOZEKI